防水とは、建物を雨漏りから防ぐために、
建物の中に水が入りこまないようにする仕組みのことです。
雨漏りの原因は、① 水があり、② 水路(みずみち)があり、③ 水を動かす重量などの力が作用するためですが、防水工事で①・②にしっかり対応することで、建物を水漏れから守ります。
勾配屋根
① 水があることを防止する
雨水をすぐ下に流し、水の存在を無くす。
陸屋根(ろくやね)
② 水路を防止する
マンションのような陸屋根は平らであるため排水しにくく、水がたまり易い傾向があります。
様々な要因でコンクリートに亀裂が入り、そこから水が浸水してしまうため防水層が必要となります。
防水は建物の構造自体も守ります
防水は、建物を雨漏りから防ぐだけでなく、建物の構造自体を守っています。
建物構造の代表である鉄筋コンクリート構造は、鉄筋が弱アルカリ性に覆われ、錆から保護されていますが、コンクリートの表層から空気中の炭酸ガスなどが侵入すると、化学反応により、コンクリートのアルカリ性は失われ(中性化)、内部の鉄筋は錆びやすくなります。
その結果、コンクリートが破損したり、コンクリート中の成分が染み出す現象(エフロレッセンス)が起こり、建物の劣化が進んでしまいます。
このような構造劣化を防ぐ意味でも、防水はとても重要な機能です。
防水工法の種類と内容
防水工事にはさまざまな種類があり、用途に応じた工法で施工されています。
塗膜防水(塗る工法)
現場で液状の防水材料を塗り、化学反応で防水の膜をつくります。
フェンスの基礎があって細かい作業が必要な屋根やベランダなど、歩行を伴う場所の防水に有効です。現場施工のため、一定の厚みの確保が難しい面がありますが、さまざまな場所で施工できます。
アスファルト防水(塗る+貼る工法)
旧約聖書のノアの箱舟にも登場する、世界最古で最も信頼性の高い防水材料がアスファルトです。
液状の溶解アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを積層し、厚みのある防水層をつくります。二層以上の積層工法が原則で、水密性・耐久性とも高く、施工の不具合が出にくい工法です。
アスファルト溶融時に、臭いと煙が発生するため、近年の改修工事では、建物を利用しながらの作業環境に対応した常温粘着工法※1・トーチ工法※2もあります。仕上げは、防水層の上をコンクリートで保護する押さえコンクリート仕上げと、砂の付いたシートで仕上げる露出仕上げの2タイプがあります。
※1 常温粘着工法とは…
従来のアスファルトよりも耐久性を向上させた、改質アスファルトを原料としたシートを、裏面に付いているゴムアスファルトの粘着材で貼り付けていく工法。
※2 トーチ工法とは…
常温粘着工法と同じく、耐久性の高い改質アスファルトを原料としたシートで、裏面をトーチバーナーと呼ばれる大型バーナーであぶって貼り付ける工法。
シート防水
ゴムや塩ビ(塩化ビニル)でできたシートを下地に貼りつければ完成します。最大のメリットは簡便性です。
一方で外部損傷にやや弱く、施工管理がより重要になってきます。
塗膜防水/アスファルト防水/シート防水による防水層の標準耐用年数
防水工法の種類による標準耐用年数の違いは、次の表※のようになっています。
工法名 | ウレタン塗膜防水 | アスファルト防水 押えコンクリート仕上げ |
アスファルト防水 露出砂付き仕上げ |
合成高分子系 シート防水 |
---|---|---|---|---|
標準 耐用年数 | 約10年 | 約17年 (26〜38年) | 約13年 (19〜29年) | 約13年 |
工法 イメージ |
ウレタン塗膜防水 | 約10年 | |
---|---|---|
アスファルト防水 押えコンクリート仕上げ |
約17年 (26~38年) | |
アスファルト防水 露出砂付き仕上げ |
約13年 (19~29年) | |
合成高分子系 シート防水 | 約13年 |
※建設省総合開発プロジェクト(昭和55〜59年)の「建築防水の耐久性向上技術」資料より引用( )内の年限は、田島ルーフィング(株)の経年防水層分析試験など、独自研究データによる推定耐用年数
防水層の寿命を考慮すると、建物のライフサイクルの中で、2〜4回の防水改修が必要となります。
納まりとは…
防水層の裏側に水が回り込まない仕組みをつくることを「納まり」といいます。
笠木部分にひび割れが多く発生している場合、雨水が浸入しやすくなっています。このような場合は対策として塗膜防水を新設し、アゴテープ※などで笠木に水切りをつけます。