〈よくある疑問〉雨が降っていても防水工事はできる?雨天の施工で起こる問題点は?

雨

梅雨から夏、初秋にかけて、日本では雨の降る日が増えますが、この季節になるとご自宅で雨漏りを見つける方も多いでしょう。

では、いざ雨漏りが見つかった場合、雨季でも防水工事は可能なのでしょうか?

そこで、今回は多くの方が疑問に思う「雨の季節での防水工事」についてや、適した施工時期についてお話しします。

「そろそろ自宅の防水を見直さないと」とお考えの方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
●雨や湿気は、防水工事の天敵です。
●雨の続く時期に雨漏りを見つけた場合は、応急処置をしてから専門家に相談しましょう。
●関防協は、防水のエキスパート集団です。大規模修繕をご検討中の方は、私たちまでご相談ください。




そもそも防水工事が失敗しない条件は?雨だと施工できない?

防水工事は、家の性能や快適な暮らしを保つために雨水から家を守るための工事です。

そのため、その他の塗装工事と同様に「晴れの日」に行うイメージが強いでしょう。

では、雨季に防水工事を行うことはできるのでしょうか?

ここでは、防水工事の種類によって、施工不良にならないためのポイントや、雨の日に施工ができるのかどうかについて解説します。

ウレタン防水の場合

ウレタン防水工事の基本的な工程は、以下の通りです。

  1. 下地の清掃(ケレン清掃・高圧水洗)
  2. プライマー塗布
  3. ウレタン防水塗布(1層・2層の2回塗り)
  4. トップコート塗布


ウレタン防水塗膜が正常な性能を保つためには、プライマー・ウレタン防水・トップコートそれぞれの工程で十分な硬化時間を取らなくてはいけません。

防水塗料のメーカーは、それぞれの塗料に対して、硬化必要時間や上塗り可能時間を明記しています。(参考:田島ルーフィング|材料の乾燥・硬化時間

基本的には乾燥して暑い環境下が最も早く硬化し、材料によって前後するものの、次の工程に移るまでにそれぞれおよそ12〜24時間程度かかります。

では、雨の多い季節だとどのようになってしまうのでしょうか?

まず、雨が降っている時はもちろん、湿度が高い状態で完全硬化を待たずに次の工程に入ってしまうと、“硬化不良”と呼ばれる現象が起きてしまいます。

これは、いくら放置してもウレタン防水材が硬い塗膜を形成せずに、いつまで経っても表面がベタつく状態です。

これではメーカーが保証した防水性能は現れず、どんどんと塗膜に汚れや埃が付着してしまいます。

ですから、ウレタン防水の場合には、降水はおろか、施工場所が湿っているだけでも防水工事はできません。

また、施工後硬化が完了する前に降雨があった場合も、表面に凸凹が出てきてしまいます。

『ウレタン防水は、雨天及びその前後は施工できない』

〈関連ページ〉
関東防水管理事業協同組合|コラム|ウレタン防水とは?工法&工期・メンテナンスについて徹底解説
関東防水管理事業協同組合|コラム|大規模修繕工事を検討中の方“必見” 防水工事に関する「用語集」


シート防水(塩化ビニル樹脂系)の場合

シート防水(塩化ビニル樹脂系)には、主に2種類の工法があり、それぞれ下のように進みます。

〈接着工法〉

  1. 下地(亀裂・欠損部)の補修
  2. 下地清掃(ケレン清掃等)
  3. 接着剤塗布
  4. シートの貼り付け
  5. シート端末処理
  6. 立ち上がり部シート端末押え金物設置

〈機械的固定方法〉

  1. 下地(亀裂・欠損部)の補修
  2. 下地清掃(ケレン清掃等)
  3. 絶縁シートの敷設
  4. 固定金具(塩ビ被覆 ディスク及びプレート)取り付け
  5. 平場シートの貼り付け(電磁誘導加熱装置他)
  6. 平場シート重ね部の接合(熱風溶接機・溶着剤)
  7. シート端末処理

「接着工法」の場合は、接着剤塗布後にオープンタイム(乾燥時間)が必要となりますが、事前に下地の乾燥状況の確認も重要です。

降雨後などの湿った下地には正常な接着力が確保できません。

一方、「機械的固定工法」の場合は、接着工法と比べると下地補修が簡略化できますが、固定金具(塩ビ被覆ディスク鋼板)を躯体にアンカー固定するため、その作業は雨天時には行えません。

また、シート貼り付け及びシート重ね部の施工で使用する電磁誘導加熱装置や熱風溶接機・溶着剤も、漏電事故や接着不良のリスクが高いため、やはり雨天時の施工は不可です。


『シート防水は、雨天では施工できない』

〈関連ページ〉
関東防水管理事業協同組合|コラム|シート防水とは?工法&工期の種類や補修方法について徹底解説

アスファルト防水の場合

アスファルト防水には、下記の工法があります。

〈常温密着工法(冷工法)〉

防水層表面が粘着層となっており、剥離紙を剥がしながら貼り付け、転圧施工する工法です。

〈トーチ工法〉

防水層裏面にアスファルトがコーティングされており、専用バーナーで炙りながら貼り付け施工する工法です。

〈熱工法〉

専用の溶解釜で溶かしたアスファルトで、ルーフィング(シート)を交互に貼り重ねていく100年以上採用実績のある工法です。保護コンクリート仕上げの場合は、この熱工法が施工されています。

アスファルト防水工事は、下のような順序で進みます。

  1. 下地(亀裂・欠損部)の補修
  2. 下地清掃(ケレン清掃等)
  3. プライマー塗布
  4. アスファルトルーフィングシートの接着
  5. シートの端末処理
  6. トップコート塗布
  7. 立ち上がり部シート端末押え金物設置


アスファルトルーフィングシートの接着には先ほど紹介した3つの方法がありますが、どれも悪天候では施工ができません。

また、施工に際しては他の工法同様に下地の乾燥が不可欠です。

『アスファルト防水は、雨天では施工できない』





防水や下地補修の雨天工事はNG!調査・洗浄作業ならOK!

ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水どの工法においても、いざ工事が始まってから長雨が続けば、硬化不良や材料の性能低下などのリスクが高くなります。

具体的な問題点は主に下の通りです。

  • 下地補修の際に、セメントモルタルや樹脂モルタルで下地を調整したり、躯体のクラックを補修するような作業ができない
  • ウレタン塗膜材が硬化不良になる
  • 前工程の塗料が乾かぬうちに次の工程に進んでしまうと、硬化不良はもちろん、防水層内部の湿気が原因で塗膜の膨れや浮き、剥離を引き起こす


このように、防水工事と雨の相性はとても悪く、施工技術や知識が豊富な施工会社ほど、無理に工事を進めるようなことはしません。

ただし、雨天でもできる作業もあります。

それが、「雨漏り調査」と「高圧洗浄」です。

まず、雨漏りが時々起こるような現場の場合、雨の日に調査をすることで原因箇所を特定できる場合もあります。

雨漏り調査の際には、敢えてホースで怪しい箇所に水をかけることもあるほどです。

高圧洗浄とは、防水工事を始める前に、既存防水層などに高圧の水を噴射して汚れを落とす作業で、雨の日であっても施工できます。

このように、施工会社は天気予報を見ながら、雨の日でもできる作業・小雨ならできる作業・曇りや晴天の日でなければできない作業をうまく並べて工程を組み立てるのです。

ただし、ここまで解説してきました通り、防水工事の作業は、下地補修から防水材施工まで、雨天及びその前後は実施しないことが最重要事項です。


雨漏りを見つけても長雨…どうすればいい?DIYで応急処置できる?

マスキングテープ

では、いざ雨の続く時期に雨漏りを発見したら、どうすればいいのでしょうか?

まずは落ち着いて以下のことをしてみましょう。

  • 防水施工業者に連絡をして、雨漏り調査をしてもらう(施工は雨が少ない時期に別途行う)
  • ビニールシートを怪しい場所にかぶせて応急処置をする(飛散しための処置は必須)
  • 室内の被害が広がらないように、バケツを置いたり漏電しないように電化製品のコンセントを抜いておく


ここで注意しなくてはいけないのが、間違っても防水塗料やコーキングで補修しないという点です。

ホームセンターでも防水塗料は売られていますが、既存防水層との相性もあるため、焦って闇雲に上塗りなどすると状況を悪化させる可能性があります。

また、コーキングで目ぼしい隙間を手当たり次第埋めてしまえば、入った水の出口を防いでしまって、室内の被害がひどくなる恐れもあります。

まずは、落ち着いて専門家に相談してみるのが良いでしょう。

〈関連コラム〉
関東防水管理事業協同組合|コラム|屋上・ベランダの防水工事を自分でやるのは危険!DIY防水補修のメリット・デメリットや注意点を解説



関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。

工事会社や施工方法、施工時期を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。

「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。

当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます




まとめ|防水工事は雨が少なく乾燥した季節がベスト

防水工事はどの工法においても、雨が多く湿度の高い季節はあまりおすすめできません。

それは、十分な防水性能が確保できず、クレーム事故につながってしまうからです。

長雨の季節に雨漏りを見つけたら、まずは応急処置をして専門家に相談しましょう。


私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。

「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。

都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。



運営者情報

関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

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