屋上付物件は賃貸マンションの中でも人気の高い物件です。眺望が良く、庭のないマンションでもアウトドアリビングを楽しめるからでしょう。ただし、雨漏りを防ぐ対策が充分にされていない屋上では、楽しむどころか漏水という被害を入居者に与えてしまいます。
マンションやアパートの所有者がしなくてはならない防水対策について確認しておきましょう。
コラムのポイント
●マンションやアパートで雨漏りを防ぐ為には屋上の使用目途にあった防水工事が必要です。
●所有する賃貸マンションやアパートの屋上防水は、住民との信頼関係と建物の耐震性・資産価値を守ります。
●劣化を見逃さず屋上の防水層を守るためには、防水改修調査が役立ちます。
賃貸マンションの屋上の使い方に合わせて選ぶ防水工法の種類
近年、人気物件になりやすいマンションの条件のひとつに、屋上を楽しめるという特徴が挙げられます。個人の部屋にルーフバルコニーが設けられているタイプが多いですが、マンションの屋上が緑化されていて、自由に立ち入れるタイプもあります。
また、屋上には、必要な室外機などだけを設置し、特定の管理者だけしか立ち入れないようにしているマンションも数多くあり、屋上の使い方はマンションによって異なります。
ただ、どのような使い方をする場合にも、建物を良いコンディションに維持し、耐震性や資産価値を低下させないためには、確実な屋上防水がされていることが必須です。屋上防水には主に3つの工法がありますが、屋上への人の出入りの頻度や使い方に応じて適切な工法を選ぶ必要があります。
屋上の使い方別に適切な屋上防水の工法を確認していきましょう。
庭園のように使う屋上
屋上を緑化して、庭園のように使う屋上にはアスファルト防水が向いています。漏水のリスクを生まずに屋上緑化をする為には、主に4つの性能を満たす防水工法が求められます。アスファルト防水は、この4つの機能を十分に備えた防水工法です。
水密性
屋上防水における水密性とは、雨水を建物の内部に侵入させない性質を指します。具体的には、水の通り道を生まない防水層を設け、漏水させないということです。
耐荷重性
屋上緑化では、防水層の上に土や植物が載るので、重みに耐えられる性質が必要です。
耐根性
屋上緑化には、植物の根が延びて防水層を損傷するリスクがあります。もしそうなれば、雨漏りを防げない防水層になってしまいます。その為、屋上緑化をする場合には、植物の根によって破壊されるリスクのない耐根性が求められます。
耐久性
上記3つの性質による働きを長期間維持し続けられる性能が耐久性です。どんなに素晴らしい性質を備えていても、短期間でその役割を果たせなくなってしまえば、メンテナンスのスパンはどんどん短くなり、その度に多額な費用が発生してしまいます。
そのような事態を避け、長期間に渡って高い防水性能を継続させる為には、耐久性の高さが必要です。緑化した屋上には、防水層の点検・修理に大変な時間と費用がかかります。
ただし、漏水させない高い性能と長期間に渡って、その高い性能を維持できる耐久性が組み合わされたアスファルト防水なら、緑化された屋上を確実に防水できることに加え、その耐久性の高さで、メンテナンスの周期を長くすることができます。
マンションやアパートの居住者など不特定多数の人が共同で使う屋上
洗濯物を干したり、夕涼みや子どもを遊ばせたりするスペースとして、マンションやアパートの住民が自由に出入りできる屋上や、駐車場として使う屋上には、防水工事の中で耐久性が最も高いアスファルト防水・押さえコンクリート仕上げが向いています。
アスファルト防水・熱工法とは、100年以上の間、屋上防水に採用されてきた信頼性が高く、優秀な実績を持つ防水の方法です。液状の溶解アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを二層以上積み重ねる厚みのある防水層なので、多くの人が出入りする屋上として問題なく使えます。
押えコンクリート仕上げでのアスファルト防水の耐用年数は、全ての防水工事の中で最も長い約17年、田島ルーフィング(株)の経年防水層分析試験など、独自研究データによる推定耐用年数は26〜38年です。
さらにアスファルト防水での改修をする際は、サーモコントロール断熱という選択肢もあります。サーモコントロール断熱とは、防水と同時に断熱と遮熱ができる防水工事です。屋上で断熱と遮熱ができるので、冷暖房が効率よく働くようになり、マンションやアパートの全ての部屋に快適な温熱環境が調います。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
>>>田島ルーフィングオフィシャルサイト サーモコントロール断熱とは?
関連コラム
>>>ビルやマンションの屋上防水の種類と断熱の関係 サーモコントロール断熱とは?
室外機などを置くだけの特定少数の管理者しか立ち入らない屋上
アスファルト防水露出砂付き仕上げや塗膜防水、シート防水などすべての工法を採用できます。アスファルト防水露出砂付き仕上げとは、アスファルトルーフィングを2層以上に施工する耐久性の高い工法です。表層は砂付ルーフイング仕上げとなっています。標準耐用年数は13年、田島ルーフィングでの推定耐用年数は19〜29年です。
塗膜防水とは、ウレタン結合と呼ばれる化学反応によって生成された樹脂を複数回塗布し、硬化することで防水の膜をつくる防水工事の方法で、耐用年数は約10年です。
屋上にはフェンスの基礎など、工事のし難い個所がありますが、塗る工事である塗膜防水であれば、問題なく防水工事が行えます。
シート防水はゴムや塩化ビニルから作られたシートを、下地に貼りつける単層仕様の防水工事の方法です。標準耐用年数は13年です。
雨漏りで発生する居住者の部屋への被害と建物の劣化
雨漏りによって住民の部屋に被害が発生した場合、マンションやアパートの所有者は補修しなくてはなりません。修復費用がかかるだけではなく、建物の耐震性も低下します。住民からの信頼度が低下し、退去に繋がることも考えられます。
また、雨漏り被害が目に見えている場合、入居希望者が減少する恐れがあります。屋上付物件を探している人は、内覧をする際、雨漏りの兆候はないか確認します。その際に、雨漏りによる天井のシミがあったり、屋上に部分的な劣化の兆候が見えたりすれば、契約は見送ることになるでしょう。
そのような事態を防ぐ為には、常に雨漏りをさせない屋上にしておくことが必要です。
関連コラム 【マンションの雨漏りの原因と対処法】保険や応急処置についても解説
屋上防水の劣化を見逃さない防水調査
雨漏りを発生させないためには、屋上防水層のメンテナンスが大切です。マンションの屋上の使用目途に応じて適切な防水工事を行わなくてはなりません。屋上の防水層には耐用年数がありますが、それはあくまでも目安です。
屋上の使い方や天候、メンテナンスの頻度によって、耐用年数を過ぎても良い状態を維持している屋上もあれば、まだ耐用年数まで間があるのに劣化が始まっている屋上もあります。
屋上の劣化は、ドレンという排水口にゴミや落ち葉が詰まるというような確認しやすい現象だけではありません。
押えコンクリート仕上げであれば、押えコンクリートのヒビ割れや伸縮目地の不良、露出アスファルト防水であれば基材の露出、シート防水であれば防水層のフクレ、塗膜防水であれば、ウレタン塗膜材が膨潤してスポンジ状になる膨潤劣化など、防水工法ごとに様々な劣化現象が発生します。シート防水では、鳥に穴を開けられるというようなことが発生することもあります。
このような劣化の兆候は早めに発見できれば、深刻な被害を受けることがないことに加え、防水改修の費用が抑えられます。ただ、専門家が見れば些細な兆候であっても発見できますが、一般的には初期の兆候の発見は難しいです。反対に考えれば、目に見えるほどの劣化は、かなり進行し深刻になっているとも言えます。
そのような事態を避ける為には、専門家の目で見る防水調査が役立ちます。耐用年数まで間がある場合でも、不安を感じたら防水調査をして早期に発見し、屋上防水を良い状態に保つことが、アパートやマンションの信用度を高め、建物の寿命と、資産価値を維持します。
防水工事と防水層の劣化を未然に防ぐ定期的な防水改修調査は、コンクリートの建物の安全と資産価値を維持する為に、必要不可欠です。屋上防水の状態に不安がある場合や、防水調査についてわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。
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関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
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当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
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