ビルやマンションの屋上防水の劣化を防ぎ良い状態に維持する為には適切なメンテナンスが必要です。鉄筋コンクリート造のマンションやビルの法定耐用年数(減価償却期間)は47年ですが、屋上防水の一般的な耐用年数は10年〜15年です。
屋上の劣化は天候や手入れ、防水層の状態によって変わる為、メンテナンスの時期を知ることが大切です。
コラムのポイント
●鉄筋コンクリート造のマンションやビルは法定耐用年数より長く使い続けられます。
●長く良い状態を維持する為には屋上防水が重要です。
●防水調査と適切なメンテナンスがマンションやビルの寿命を延ばし資産価値を向上させます。
屋上防水と建物の劣化の関係
マンションやビルの法定耐用年数は47年ですが、その期間を超えても資産価値を維持し続けている建物がほとんどです。資産価値が維持できているということは、その建物が地震などの自然災害が発生した際にも被害を受ける恐れがないということです。
加えて、マンションの住民やビル内のオフィスや店舗の人々が安全に快適に過ごせることと、建物の美観を維持し続けることも大切な要素です。 そして、資産価値を維持し続ける目安となる建物の一般的な耐用年数は、屋上防水の状態によって大きく変わります。
なぜなら、屋上からの水漏れは直接、建物の劣化に繋がるからです。鉄筋コンクリート造には木造とは異なり、水に強いというイメージがありますが、実際には経年で雨漏りのリスクが発生します。
雨漏りの原因を確認する前に屋根の構造を見ておきましょう。
屋根には雨漏りを防ぐ為の防水層が全面に施工されています。上記の保全ガイドブックの例では、保護する押さえコンクリートが施されています。
この押さえコンクリートの表面には、気候や温度の変化、施工後の乾燥収縮によるひび割れを防ぐ為に、伸縮目地が作られています。
さらに屋上には、雨水を流す為のルーフドレンとたてどい、雨水を排水し外壁の劣化を防ぐ為のパラペット、パラペットの内部に雨水を浸透させない為の笠木が設けられています。このそれぞれの部分に雨漏りの原因が発生します。
コンクリートと防水層の劣化
空気中の炭酸ガスはアルカリ性であるコンクリートを徐々に中性化させる為、経年によってコンクリートの表面は雨水に浸透されやすい状態になっていきます。雨水に浸透されやすい状態になると、防水層にも悪影響が及び、コンクリートの内部に雨水が浸透していきます。
その結果、コンクリートで守られていなければならない鉄筋の腐蝕が始まり、建物の構造部が劣化するという深刻な事態に発展していく恐れがあります。また、コンクリートの打ち継ぎ目地のシーリングが劣化し、その部分から雨水が浸透することもあります。
ルーフドレンの目詰まり
雨水を流す働きをするルーフドレンに落ち葉やゴミなどが詰まると、排水できなくなり雨漏りの原因を作ってしまいます。
パラペットのひび割れや継ぎ目の劣化
パラペットもコンクリートでできているので、屋上の表面と同じようにひび割れが発生する恐れがあります。その他にも、防水層のパラペットの間の継ぎ目を密着させているシーリングが劣化すると、その継ぎ目から雨水が浸透してしまいます。
笠木の劣化
笠木にヒビが発生、モルタル欠損、又はコケなどが生えている状態の場合に、立ち上がり防水層の裏側に雨水が浸透し漏水に繋がることがあります。
屋上防水の種類と耐用年数の関係
屋上の防水改修には2つの仕様があり、現在の防水層の種類や状態、屋上の使い方に合わせて適切な仕様を採用します。
保護仕様で仕上げる防水工事
マンションやビルの屋上には立ち入り禁止にしているケースと、憩いの場として提供しているケースがあります。憩いの場として提供しているケースとは、緑化スペースを設けたり、屋上菜園を楽しんだりできるような屋上です。
病院などでは洗濯物を干すスペースとして活用しているケースもあります。 そのようなマンションやビルでは人の出入りが頻繁になるので、人が出入りしない屋上より高い耐久性が求められます。
その為、コンクリートやブロック、アスファルトコンクリートなどを用いて、防水層上に保護仕上げ層を設けます。 保護仕様を採用することによって屋上の耐久性は向上しますが、露出仕様と比較すると重くなるという面があります。
アスファルト防水《押えコンクリート仕上げ》
保護仕様の防水工事はアスファルト防水・押えコンクリート仕上げで行われます。世界最古で最も信頼性の高い防水材料がアスファルトです。
液状の溶解アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを積層し、厚みのある防水層をつくります。
二層以上の積層工法が原則で、水密性・耐久性とも高く、施工の不具合が出にくい工法です。防水層の上をコンクリートで保護する押さえコンクリート仕上げます。
耐用年数
建設省総合開発プロジェクト(昭和55〜59年)の「建築防水の耐久性向上技術」資料では約17年とされています。田島ルーフィング(株)の経年防水層分析試験など、独自研究データによる推定耐用年数は26〜38年です。
露出仕様で仕上げる防水工事
マンションやビル全体で使用する電気や水道設備などを設置し、安全確保やイタズラ防止の為に立ち入り禁止にしている屋上もあります。このような屋上には防水層がそのまま仕上げ材になったり、保護塗料などを塗布して仕上げたりする露出仕様が採用されるケースが多くあります。
露出仕様は屋根が軽くなるだけではなく、改修工事を行いやすくなるメリットがあります。
アスファルト防水《砂の付いたシートで仕上げる露出仕上げ》
アスファルト防水《押えコンクリート仕上げ 》と同じ内容の工事をしますが、砂の付いたシートで仕上げる露出仕上げで行います。
耐用年数
建設省総合開発プロジェクト(昭和55〜59年)の「建築防水の耐久性向上技術」資料では約13年とされています。田島ルーフィング(株)の経年防水層分析試験など、独自研究データによる推定耐用年数は19〜29年です。
ウレタン塗膜防水
液状の防水材料を塗り、化学反応で防水の膜を作る工法です。
耐用年数
標準耐用年数は約10年です。
合成高分子系 シート防水
ゴムや塩ビ(塩化ビニル)でできたシートを下地に貼りつける工法です。
耐用年数
標準耐用年数は約13年です。
防水調査でメンテナンスの時期を確認
防水層の改修は、現在の防水層の状態によって工事の選択肢が変わります。比較的良好な状態であれば、新しい防水層をかぶせるかぶせ工法でできるので、工事期間も工事費用も抑えられます。
一方、防水層の劣化が進んでしまっている場合には、防水層を全面撤去し、下地から作り直さなくてはなりません。その結果、工事期間が長引き工事費用も嵩んでしまいます。そして防水層の劣化の進行は、気候やメンテナンスの方法によって変わる為、耐用年数より早くメンテナンスが必要になることがあります。
また、屋上の様子を見ても、屋上の防水層がどの程度劣化しているのかという判断はとても難しいです。耐用年数を迎えているが見た目には問題がなさそうに見えるという状況や、耐用年数までまだ数年あるが劣化している不安を感じるというような状況には、防水調査が非常に有効です。
防水調査をすることによって、専門家でなければ発見できない防水層の劣化をいち早く見つける事ができ、短い期間で費用を抑えた防水改修に繋げられます。
関東防水管理事業共同組合|防水層改修調査のご依頼を承ります
屋上の適切なメンテナンスをすることでビルやマンションの水漏れを防ぐことは、マンションの住民やビルを使用する人々の安全を守り、資産価値を向上させます。
屋上が確実に水漏れを起こさない状態になっているかどうかを知るためには、防水調査をすることをお勧めします。
関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。
当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
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