ビルやマンションの屋上には、建物を安全な状態に維持する為に防水層が設けられています。この防水層に使われるウレタンなどの塗料によって、屋上防水の耐用年数が変わります。
屋上防水の劣化は建物の寿命に直接かかわってくる大切な部分なので、塗膜防水材の選び方が重要です。屋上の使用目的や状態によっては他の防水工事があっている場合もあります。
コラムのポイント
●塗膜防水とは防水用塗膜材を使って施工する屋上の防水改修の方法です
●複雑な形状の個所にも施工できますが、他の工法より耐用年数は短いです。
●屋上防水を劣化させないためには防水調査が役立ちます。
屋上防水の必要性
ビルやマンションの印象を左右するエントランスや、毎日通行する共用廊下は、常に視界に入ります。その為、見た目の良さや快適性が低下してくると、すぐに多くの人がそのことに気がつきます。
一方、屋上はエントランスや共用の廊下とは違い、日常的には立ち入ることの少ない場所ですが、建物の耐久性には大きな影響のある場所です。屋上には雨水による漏水のリスクがあるからです。
屋上は常に紫外線や雨風に晒されている為、屋内の部分に比べると劣化しやすく、劣化が進行すると、雨水が建物内に浸透する確率が高くなっていきます。
もちろん、屋上には雨水の浸透による漏水を防ぐ為に、防水層や排水ドレンが設けられています。ただ、経年によるコンクリートの劣化や、排水ドレンの詰まりなどによって漏水のリスクが発生します。
屋上防水には目安となる耐用年数がありますが、実際には天候や屋上の使い方、メンテナンスの頻度などによって、防水層が良い状態を維持できる年数が変わります。そして屋上からの漏水が発生すると、上階の部屋に雨漏りが発生するなどの目に見える被害の他に、建物の構造部に耐震性を低下させるような深刻な被害が引き起こされるリスクが高まります。
屋上がそのような状態になると、ビルやマンションの寿命に関わる為、屋上の状態をチェックすることと、劣化が発見された場合には劣化の度合いに応じた防水改修が必要です。
防水層の種類
防水層にはアスファルト防水、シート防水、塗膜防水といったメンブレン防水(membrane:膜)や、塗布防水やステンレスシート防水、シーリング防水などがあります。この中で、ビルやマンションの屋上の防水層にはメンブレン防水が最も多く採用されています。
アスファルト防水
液状の溶解アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを積層し、厚みのある防水層をつくります。二層以上の積層工法が原則で、水密性・耐久性とも高く、施工の不具合が出にくい工法です。
塗膜防水
現場で液状の防水材料を塗り、化学反応で防水の膜をつくる工法です。フェンスの基礎があって細かい作業が必要な屋根やベランダなど、歩行を伴う場所の防水に有効でさまざまな場所で施工でき、継ぎ目のない美しい仕上がりの防水層が生まれます。
シート防水
ゴムや塩ビでできたシートを下地に貼りつける工法です。
塗膜防水の種類
塗膜防水の種類によって工法が分かれると同時に、ビルやマンションに設けられている防水層の耐用年数が変わり、建物が健康を守れる期間に影響します。
塗膜防水材には、ウレタンゴム系、アクリルゴム系、ゴムアスファルト系、FRP系が挙げられます。JISではウレタンゴム系高伸長形・ウレタンゴム系高強度形・アクリルゴム系・クロロプレンゴム系・ゴムアスファルト系が屋根用の防水塗料として分類されています。
この中で屋上防水の塗膜防水材には、主にウレタンゴム系とFRP系が使われます。
ウレタンゴム系塗膜防水
ウレタンゴム系塗膜防水と硬化剤を混合・攪拌し塗布した後、補強布を敷き込み、再度ウレタンゴム系塗膜防水を塗布し、仕上げ塗料を塗布する工法です。耐用年数は約10年です。
FRP系塗膜防水工法
ポリエステル樹脂と硬化剤を混合して塗布した後、ガラスマットを敷き込み、再度ポリエステル樹脂を塗布し、仕上げ塗料を塗布する工法です。軽量でありながら耐熱性、耐食性、耐候性が高く強靭であるという特徴があります。
塗布した後、短い時間で硬化するので、塗り重ねの時間がウレタン防水より短縮できます。
ビルやマンションの屋上の他、プールや上下水道などにも使われるほど、高い防水能力があります。耐用年数はおよそ10年です。
ウレタン系塗膜防水は費用が抑えられることや、凹凸のある形状の部分にも施工しやすい為、数多く屋上防水に採用されています。ただ、手作業であることから、技術者によって工事の質に差が出てしまうという問題点があります。
確実な効果を上げる屋上防水をする為には、工法の選び方や、塗膜防水材の種類も大切ですが、施工を依頼する技術者の選び方も結果を左右します。
ビルやマンションの健康を守る防水調査
防水層には施工方法ごとに耐用年数の目安がありますが、屋上を取り巻く環境や天候によって、実際の耐用年数と必ず一致するとは限りません。特に、塗膜防水はアスファルト防水やシート防水と比較すると耐用年数が約10年と短いので、メンテナンスの時期を逃さないことが重要です。
耐用年数内であっても、屋上の使い方や天候などの影響で防水効果が低下してしまうこともある為、屋上の状態を見極める必要があります。
「塗膜防水」の診断チェックポイント
ウレタン防水には膨潤劣化と伸縮目地上の破断という2つの深刻な劣化サインがあります。どちらも屋上からの漏水を発生させる危険度の高い状態です。
膨潤劣化
ウレタン塗膜材が膨潤してスポンジ状になっている状態です。
伸縮目地上の破断
伸縮目地処理の不良又は仕様選定ミスによりウレタン塗膜防水層が破断している状態
このような深刻な状態になる前には、塗膜が粉上になるチョーキング現象や、塗膜が薄くなる現象が発生しています。その段階でメンテナンスをしないと、塗膜の破断や剥離へと進んで行ってしまいます。
劣化状態が進むほど、深刻な現象が発生します。そして状態が悪くなればなるほど、屋上からの漏水リスクが高くなっていきます。漏水してしまえば、マンションやビルの室内に雨漏りが起こります。最悪の場合には構造部の鉄筋に影響が及び、建物の耐震性が低下します。
室内の雨漏りが発生すれば、マンションやビルの所有者が被害を受け、耐震性が低下すれば、安全性と建物の資産価値が同時に低下していきます。
さらに、状態が悪くなればなるほど屋上防水の工事期間が長くなり、工事費用も嵩んでしまいます。ただ、屋上は多くの場合目に入りにくい場所である為、劣化の兆候を日常生活の中では見つけにくいです。さらに、専門家の目から見なければ、劣化の状態を見極められない難しさもあります。
その為、耐用年数の目安だけに頼らず、定期的に防水改修調査をすることをおすすめします。ビルやマンションの健康を守る為にも、工事期間や工事費用を抑える為にも、防水調査が役立ちます。
防水改修調査とは
防水改修調査とは、屋上からの漏水の有無、ひび割れや退色、ふくれ、しわなどの劣化の度合いや範囲の確認、シーリング材の劣化や固定金物類の不具合の確認を写真撮影や実測をしながら行う調査です。
この調査の結果で、最適な防水工事の方法などを知ることができます。
屋上の様子を見ても、屋上の防水層がどの程度劣化しているのかという判断はとても難しいです。耐用年数を迎えているが見た目には問題がなさそうに見えるという状況や、耐用年数までまだ数年あるが劣化している不安を感じるというような状況には、防水改修調査が非常に有効です。
防水改修調査をすることによって、専門家でなければ発見できない防水層の劣化をいち早く見つける事ができ、短い期間で費用を抑えた防水改修に繋げられます。
関東防水管理事業共同組合|防水層改修調査のご依頼を承ります
関連コラム
関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。
当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。
当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます。 少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。