屋上防水には欠かせない“改修用ドレン”|重要性や仕組み・施工方法まで詳しく解説
屋上やベランダの防水リフォームというと、防水塗装や防水シートを貼る作業をイメージする方が多いでしょう。
しかし、それ以外にも重要な工程はいくつもあります。
そのうちの一つが「改修用ドレン」の取付工事です。
そこで、今回は「改修用ドレン」について、概要から施工方法、注意点まで詳しく解説します。
防水リフォームをご検討中の方は、是非参考にしてください。
●防水改修工事と合わせて、改修用ドレンの設置も検討しましょう。
●関防協は、防水のエキスパート集団です。大規模修繕をご検討中の方は、私たちまでご相談ください。
Contents
防水工事の見積に必ずある「改修用ドレン」とは?
まず、皆さんは「ドレン」がどんなものかご存知ですか?
ドレンは、雨水などを排水するための装置で、防水工事においては排水口に取り付ける部材を指します。
傾斜の一番低い部分の床スラブや壁に穴をあけて、そこに差し込むように取り付けます。
そのため、取り替えをするとなると躯体を痛めて既存ドレンを撤去しなくてはならず、大掛かりで様々なリスクが高まる懸念は否定できません。
実際に、国土交通省が作成した「公共建築改修工事標準仕様書」によると、既存ドレンを撤去する場合は以下のようにしなくてはいけないと記載されています。
平場の既存保護層等を残し、改修用ドレンを設けない場合は、ルーフドレン端部から 500mm程度まで保護コンクリート等の既存保護層を四角形に撤去する。
引用:公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和4年度版
既存保存層を撤去するということは、雨漏り発生の危険性が高まるということです。
そのリスクを解消すべく生まれたのが「改修用ドレン」。
防水リフォームの際に、既存ドレンにひと回り内径の細いドレンを差し込むことで、排水口廻りを解体撤去をすることなく、排水力を一新できます。
改修用ドレンと言っても、その形状やサイズ、素材にはいくつかの種類があり、防水施工会社は現場に合わせた材料を選ばなくてはいけません。
形状の種類
改修用ドレンには、“竪(たて)”と“横引き”2種類の形状があります。
既存ドレンがどちらのタイプかによって使い分けます。
ちなみに、それぞれの同径ドレンを比較すると、たて型ドレンの方が排水能力は高いです。
サイズの種類
先ほどもお話しした通り、改修用ドレンは既存ドレンに差し込むように設置するため、既存ドレンよりも内径の小さいものを選択しなくてはいけません。
既存ドレンは、屋上などの面積によって選定され、広い場所ほど太いドレン、狭い場所では細いドレンを用います。
公益社団法人 空気調和・衛生工学会の作成した給排水衛生設備基準(SHASE-S 206)の中では、既存ドレンは50〜200φのものが推奨されており、改修用ドレンはそれに対応できるようなサイズ展開になっています。
素材の種類(改修用ドレン)
改修用ドレンは主に、「銅製」「鉛製」「塩ビ製」に分類されます。
それぞれ特徴が異なり、どれが優れてどれが劣っているという訳ではないため、現場の状況に合わせて最適なものを選ぶことがポイントです。
[銅製ドレン]
既存の形状に合わせて変形できるため、改修用ドレンで用いられます。鉛製ドレンと比べると、異種金属同士で起こる接触腐食を受けにくく、酸性雨に対する耐久性も高い素材です。
[鉛製ドレン]
鉛は銅と同じく柔らかい金属なので、変形できるため改修用ドレンとして使われますが、異種金属(既設の排水管)の材質との相性によっては、腐食してしまう可能性があります。
[塩ビ製]
塩ビシート専用のドレンで、塩ビシートと融着・溶着して取り付けます。
改修用ドレンの施工方法は?
ビルやマンションで最も一般的な鋳物製ドレンは、経年劣化によって錆びてしまいます。
そこで、防水改修工事の際に、その劣化したドレンの上から改修用ドレンをかぶせて、排水力をカバーするのです。
では、具体的な施工手順を見ていきましょう。
既存ドレンの形状・サイズを確認する
防水工事に先立って必ず現場調査を行いますが、その際に施工会社は既存ドレンの内径を確認します。その内径に合わせて、適切なサイズの改修用ドレンを選ぶ必要があるからです。
既存ドレンのストレーナー・上皿、周辺防水層の撤去
まずは、プレート状のパーツやカバーキャップ、周囲の防水層を撤去します。防水層の上から押えコンクリートが施工されている場合は、それらも撤去します。
段差部分を下地処理
周辺防水層を撤去した際に、段差(不陸)が大きい場合は適宜モルタル補修して平滑にします。
改修用ドレンの設置・取付
改修用ドレンを既存のドレンに差し込みます。銅製・鉛製ですと、下地形状に合わせてハンマーで叩いて変形できるため、隙間なく密着させられます。
防水工事
下地に改修用ドレンを接着させた後、上から防水層を施工します。
ドレンキャップを被せて完了
防水工事が完了したら、上からドレンキャップを取り付けて完成です。
防水層からの雨漏りは、実はこのドレン周辺の不具合が要因であることも多いため、改修用ドレンの取付は防水改修において重要な工事です。
適正に取り付けることはもちろん、併せてドレン周りの防水脆弱部をきちんと補修しなくてはいけません。
“ドレンキャップ”とは?
ドレンキャップとは、改修用ドレンの上に被せて、落ち葉などの大きなゴミが雨樋へ流れ込まないように防ぐパーツです。
板バネ(滑り止め)を改修用ドレンの中に差し込んで固定します。
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改修用ドレンの注意点は?どこにでも施工すればいい訳ではない?
改修用ドレンは、排水部分の内径が細くなるため、どうしても落ち葉やゴミが詰まりやすいという難点があります。
また、施工箇所によっては金属プレートと周辺の防水層に段差ができてしまうため、その部分をきちんと平さなければ、水が溜まりやすく防水層への負荷が大きくなり、劣化を早めてしまいます。
ですから、改修ドレンを設置したからと言って放置できるわけではなく、こまめな点検や清掃、メンテナンスは欠かせません。
専門家に定期点検をしてもらうなど、防水層を痛めないように心がけましょう。
そして、もう一点知っておかなくてはいけないのが、「どこにでも設置できる訳ではない」という点です。
以下のような場合は、改修用ドレンをおすすめできません。
- 既存ドレンの内径が50φ以下で一ヶ所しか設置されておらず、既に排水能力が低い場合
- まだ劣化しておらず既存防水層とドレンの密着性が高い場合
既存ドレン50φに適応する改修用ドレンはあるものの、排水能力の低下は否めません。
細いドレンで設置箇所が少ないと、大雨の際に排水能力が追いつかず、水溜り状態になる可能性があります。
これでは防水層の劣化を早めてしまい、全体的に支障が出てきてしまいます。
そして、既存ドレンや周辺防水層が劣化していない場合に、改修用ドレンを施工することも危険です。
なぜなら、改修用ドレンを取り付ける際に防水層と既存ドレンを剥離させなくてはいけないからです。
良好に密着している箇所を無理やり剥がしてしまうと、下地にまで影響を及ぼします。
このように、どの現場でも改修用ドレンの設置が最善策とは言い切れないため、専門家にしっかりと調査してもらいましょう。
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合わせて知っておこう!こんなにある防水工事の“雨仕舞金物”
防水工事には改修用ドレンやドレンキャップの他にも、関連する金物がいくつかあります。
これらがどんなものでどんな役割があるかを知っておくことで、見積書の精査や施工会社との折衝がスムーズに進みます。
ぜひ参考にしてください。
端末押さえ金物
シート防水・アスファルト防水など下地に接着して施工するものは、防水層立ち上がり部の端部をアルミ製の押さえ金物をしっかりと固定することで、端末からの剥離やズレ落ちを防ぎます。
水切り金物
水切り金物とは、防水層の端末部に「アゴ(壁面や屋上のパラペット上部についた凸部)」がない場合や、アゴはあっても水切りがない場合に、“雨仕舞い(雨の侵入を防ぐ仕組み)”を確保するために設置する金物部材です。
笠木天端に取り付ける際は、下り部分を躯体から少し離して設置することで、伝わり落ちる雨が極力壁に流れないようにします。
壁廻りやパラペットのアゴの出幅が少ない場合は、壁を伝わった雨水が立ち上がり部防水層の端末部から雨水が流入しやすいですが、上記のような水切りを設置することで、それを防ぐことができます。
関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
工事会社や工法を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。
当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。
当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます。
まとめ|改修用ドレンは防水工事のキーアイテム
ドレンは、屋上などに降り注いだ雨水が集中する場所です。
そのため、適切なメンテナンスをしなくては、いくら平場の防水層が正常でも雨漏りにつながってしまいます。
改修用ドレンなどの小さな部位についても、定期的に点検を行い、適切な施工をしてもらいましょう。
私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。
「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。
都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。